35カ国以上で刊行され、600万部突破のベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』を読みました。
ハラリ氏は本書で、人間は神になることをめざすだろうと結論付けています。
人間は神になることを目指す、とはいったいどういうことでしょうか。
本書の内容を要約し、解説してみました。
ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』要約
■書名『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 』上、下巻
■ユヴァル・ノア・ハラリ 著/柴田 裕之 訳
■予価 上下巻各本体1,900円(税別)
『ホモ・デウス』でユヴァル・ノア・ハラリ氏が予想する近未来の姿とは?
『ホモ・デウス』上巻の第1章では、今後数十年間に懸念されることと予想される未来について書かれています。
予想される未来①:過食による不健康な人々の増加
過食のほうが飢饉よりもはるかに深刻な問題になっている。
ほとんどの人が炭水化物や糖分や塩分の摂取が多過ぎ、タンパク質とビタミンが不足していてバランスが悪く、不健康である。
2030年には成人の半数近くが太り過ぎになっているかもしれない。
予想される未来②:人為的な疫病と感染症の広まりの懸念
人類にとって、飢饉に続く第二の大敵は疫病と感染症だった。
2050年の医療は、今日よりも効率的に病原菌に対処できる可能性か高い。
バイオテクノロジーは私たちがバクテリアやウイルスを打ち負かすことを可能にしてくれる。
しかし同時に、人間自体を前例のない脅威に変えてしまう。
軍やテロリストが、さらに恐ろしい疫病や世界を壊滅させる病原体を遺伝子工学で作ることもあり得る。
何らかの冷酷なイデオロギーのために、人類が自ら強力な感染症を生み出す場合、そうした感染症は将来人類を危険にさらし続けるだろう。
予想される未来③:人間はますますの経済成長をのぞむ
飢饉と疫病と戦争の脅威を取り除かれたとき、私たちはいったいどうしたらいいのか?
成功は野心を生む。
経済の成長が、無数の形で地球の生物学的平衡を揺るがしている。
環境汚染や地球温暖化や気候変動がこれほど話題になっているにもかかわらず、ほとんどの国が状況改善のために経済的犠牲も政治的犠牲も本気で払おうとしていない。
経済成長か生態系の安定性。
一方を選ばざるをえない時がくると、政治家やCEOや有権者はほぼ確実に成長を選ぶ。
悲劇的な結末を避けたければ、態度を改めなければならないだろう。
予想される未来④:不死不老をめざす
21世期には、人間は不死を目指して努力する見込みが高い。
遺伝子工学や再生医療やナノテクノロジーといった分野は猛烈な速さで発展しているので、ますます楽観的な予言が出てきている。
科学の努力が身を結んだら、激しい政治の争いが起こるだろう。
永遠の若さを得るための戦いが待ち受けている。
予想される未来⑤:幸せを感じられるように心と体を操作する
結局人々は何を望んでいるのか。
幸せになることを望んでいるのだ。
生物学的な幸せの定義は、快感の経験である。
まずは薬物で、国家は政治の安定や社会秩序や経済成長を増進する生化学的操作を許し奨励し、それによって幸福の追求を統制する。
さらには、脳の適切な箇所に電気的な刺激を与えたり、私たちの体の遺伝情報を遺伝子工学で操作したりするかもしれない。
永続的な快感を楽しめるように生化学的作用を変え、体と心を作り直すかもしれない。
予想される未来⑥:自らをアップグレードし、ホモ・デウスになることをめざす
人間は幸福と不死を追い求めることで、じつは神にアップグレードしようとしている。
人間は老化と悲惨な状態を克服するためにはまず、自らの生化学的な基盤を神のように制御できる必要があるから。
これまでは外界の道具のアップデートに頼ってきた。
だが将来は、人の心と体のアップグレード、あるいは、道具との直接の一体化にもっと依存するようになるかもしれない。
生物工学、サイボーグ工学、非有機的な生き物を生み出す工学をもってして。
人類がこれからめざす大プロジェクトは、創造と破壊を行なう神のような力を獲得し、ホモ・サピエンス(ラテン語で「賢い人間」)をホモ・デウス(「神のヒト」)へとアップグレードするものになるだろう。
『ホモ・デウス』の結論
今までは人間至上主義だった。
人間はわたしたちホモサピエンスが他の生き物よりも上位の存在と考え、人間が幸せで快適であることが生きる上で最も重要なことだった。
しかし、遠くない未来、データ至上主義の時代がやってくると考えられる。
意識をもたない知能が、人間よりさらに多くのデータを取り入れ、さらに効率的に処理できるデータ処理システムを作り出す。
人間はデータが代わりにしてくれるので意思決定する必要はない。ロボットや人工知能が代わりにしてくれるので働く必要もない。
そうしたら、人間ははたして価値ある存在と言えるのだろうか。
データ至上主義社会では、多くの人間が無価値な存在となり、「データ」にその座を奪われる。
すると、人間の中に新たなヒエラルキーが生まれる。
富めるものやデータを管理できる者、アルゴリズムを開発できるごく限られた者は不老不死で幸せに生きる。
まさに「ホモ・デウス」として。
それ以外の人間は、存在の価値がずっと低くなる。まるで、現在の家畜のように。
私たちのこれから迎える未来において、ほんとうに懸念すべきことはなんだろう。
議論し、解決すべき課題は何か?
何ヶ月と言う単位で考えるのなら、中東の紛争やヨーロッパの難民危機や中国経済の原則といった、目の前の問題に焦点を当てるべきだろう。
何十年の単位で考えるのなら、地球温暖化や不平等の拡大や求人市場の混乱が大きく立ちはだかる。
生命という本当に壮大な視点で見ると、本当にデータ至上主義時代を迎えるのか、迎えたらわたしたちはどうすればいいのかである。
意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになったときに、社会や政治や日常生活はどうなるのだろう。
そう遠くない未来、データ至上主義社会をむかえることは、おそらく私たちの世界を一変させるほどの変化だということを知っておくべきだ。
感想、まとめ
わたしは、本書がいいたいことはこういうこと(下記)だと読み取りました。
人間がよりよく生きていくために、今までは便利な「道具」を生み出してきた。
これからは、幸せになが~~く生きていくために、みずからの遺伝子操作や生体工学などの技術によって内面の組み換えをおこなっていくだろう。
それにはお金がいる。
そして工学の知識が必要になる。
莫大な資金を持ち、高度な工学の知識を持つものが神のような存在として君臨し、他の人間は家畜同然となるだろう。
「人間は神になることをめざす」っていうのはなかなか斬新な提言ですよね。
個人的な感想としては、ほんとうにこんな未来がくるかなあと半信半疑です。
なぜなら、数の力は大きいから。
神のようになろうとする一部の存在が、多数の人間を支配することはかなり難しいのではないでしょうか。
そうであれば、この先もやはりある程度協力し合って、人類総力戦で生きていく方が現実的にあり得る話のような気がします。
環境汚染や地球温暖化や気候変動などの懸念についての予測を含めた言及も聞きたかったところです。
そして、人類は疫病をかなり克服してきたと書かれていますが、新型コロナウイルスが猛威を振るっている今日、さらに人類の脅威となる感染症が広まる可能性は大いにあると思います。
データ至上主義になって神となる者が誕生する前に、ウイルスや環境汚染や地球温暖化や気候変動が世界を一変させる可能性もあるのではないでしょうか。
AIによって人間の仕事が奪われていくだとか、遺伝子操作や生態工学によって人間の内面をデザインしていくという予想には納得しました。
リッチな人たちが、生まれてくる前から性格や身体能力を決め、デザインベイビーが生まれてくる日が来るのでしょうね。
まるで映画「ガタカ 」のように。
本書を読んだら、これから若者が大学選択で選ぶべき学科は、工学部一択という気がしてきました。