あと2か月で40に差し掛かるという年齢で、会社を辞め、今までと全く違った頑張らない生き方をすることに決めたという著者のハ・ワン氏。
超競争社会と言われる韓国で、「上を目指して一生懸命生きる」ことをやめるのは不安もあったと言います。
それでも、ハ・ワンさんが選んだという頑張らない生き方は、なんだか心地よさそうでした。
いったい頑張らない生き方ってなんだろう?
これをテーマに、『あやうく一生懸命生きるところだった』を書評していきたいと思います。

『あやうく一生懸命生きるところだった』から学ぶ頑張らない生き方とは?
本書を手に取ると、パンツいっちょの男が寝そべってだらだらしている姿が目に飛び込んできます。
なんとも印象的な表紙。
これを見ると、「頑張らない生き方=だらだら生きる」だと思いがちですが、本書を読んでいくと、著者が言いたいのは決してそういうことではないことがわかります。
かといって、夢を追え!夢なくして生きる価値なし!みたいなことを言いたいのでももちろんありません。
「期待しすぎない」
本書を最後まで読み通すと、これが筆者の考える頑張らない生き方なんだということが分かります。
具体的にみていきましょう。
道に迷ったら、立ち止まる
「頑張れ!努力はきっと報われる!」
わたしたちは、学校でそう教えられますよね。
けれど、ある程度歳を重ねた大人ならみんな知っているはず。
実は、努力しても必ず報われるわけではないことを。
ゲーテ曰く、「人生は速度ではなく方向」であると言います。
自分はなんのために生きてるんだろう?
なぜ苦しい思いをして頑張ってるんだろう?
そんな考えが浮かぶなら、進む方向を見失っている可能性があります。
間違わずに進めているのか。
それを知るためにも、しばし立ち止まる必要があるのかもしれません。
いったい誰に勝つ必要がある?
有名な孔子の言葉に、こんな言葉があります。
「天才は努力する者に勝てない、努力する者は楽しむものに勝てない」
おそらくそのとおり。
だけど、一つ疑問がわきます。
いったい誰に勝つ必要があるの…と。
ハ・ワン氏はこのように言っています。
最も簡単に、早く、自分を不幸にする方法を探すなら、「他人との比較」をおすすめする。(P.241)
人と自分を比較するのはもうやめましょう。
だれにも勝つ必要はないのだから。
人生のすべてをコントロールしようと考えてはいけない
人生の計画を立てたとしても、それが上手くいかないことも往々にしてあります。
思い描く目標があるなら、最善を尽くしてみるべきです。
だけど、他に選択肢はないと妄信してしまうのは、愚かなこと。
何度か挑戦してダメならば、潔くあきらめる勇気も持ちましょう。
「絶対にあきらめるな」なんて言葉ほど残酷な言葉はありません。
無視してしまいましょう。
人生をコントロールするために、常に正しい選択しなきゃと自分を追い詰めるのはやめましょう。
人生は自分の思い通りにはならないもの。
そう思えたら、きっと気が楽になりますよ。
たまには一人の時間を過ごそう
人を苦しめるのは、いつでも人だ(P.107)
誰かと一緒になにかをするのは生易しいことではないですよね。
人間関係に疲れることもあるものです。
時には一人の時間を確保して、自分の欲望に忠実な時間を過ごしてみましょう。
遊びたいなら遊べばいい。
何もしたくないなら、何もしなければいい。
そもそも「ひとりでいたい」という気持ちは誰かとつながっているから生まれるものです。
ひとりの時間を楽しんだ後は、再び人の群れに戻り、喜んで一緒にいたいものです。
結局はひとりでは生きていけないのだから。
仕事に多くを望みすぎない
「本当に好きなことは仕事にするべきではない」という人がいる一方、
「本当に好きなことを仕事にするべきだ」という人がいる。
人間は欲深い生き物だから、どちらを選んでも後悔しそうです。
就いている仕事はどんな仕事でしょうか。
食べていけるということは大前提として、お金をたくさん稼げる?自己実現できる?面白い?キツくない?休みが多い?尊敬される?
どれか一つでも当てはまったら、十分なのかもしれません。
ちょっと欲を捨てたら、今の仕事でも満足できるかも。
そもそも本当に働きたいのか?という問いもあります。
答えがノーなら、食べていければ何でもいいのかもしれませんね。
思い通りじゃない現実を愛す
結局は、人生が、まわりが、世界が、思い通りにいかないのが常。
夢をかなえることができるのは、ほんの一部の人たち。
では、思い通りではない今の人生は失敗なのでしょうか。
著者も、夢をつかみたくて、幸せになりたくて、理想に近づきたくて、苦しくても頑張った時期があったと言います。
しかし、いつまでたっても幸せを感じることはなかったそうです。
ここ数年、幸せを感じる瞬間が増えた理由をこのように語っています。
あるのままの自分から目をそらして苦労し続けることをやめ、今の自分を好きになろう、認めようと決めた(P.215)
自分の人生だってなかなか悪くはないと認めてからは、不思議と些細なことにも幸せを感じられるようになった。
こんなことにまで幸せを感じられるのかってほどに。(P.215)
人生に失敗なんてない。
だから、幻想を捨て、ありのままの今の姿を認め、現実を愛しましょう。
感想、まとめ
『あやうく一生懸命生きるところだった』から学ぶ頑張らない生き方とは?を具体的にご紹介しました。
総じて、著者が言いたかったことは、あまり期待しすぎるなということでした。
そうすれば、人生も意外に悪くないと思えるようになるのかもしれません。
最近、韓国の著者が書いたエッセイを書店でよく目にします。
怠けてるのではなく、充電中です。 昨日も今日も無気力なあなたのための心の充電法
これらのような。
全部目を通したのですが、個人的に本書の『あやうく一生懸命生きるところだった』が一番好きでした。
ユーモアが含まれた軽快な文章で、プロローグから心をつかまれました。
気になっている方は、最初の数ページだけ立ち読みしてみるのもいいかもしれません(立ち読みを推奨すな (笑))
最終章もちょっぴり前向きになれるような締め方で、いい読後感です。
久しぶりにいいエッセイに出会えました。
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