直木賞候補作として注目されている『オルタネート』を読みました。
※2021年1月20日、惜しくも直木賞は他の方が受賞されました。
著者はジャニーズのアイドルグループ、NEWSとしても活躍している加藤シゲアキさんです。
口コミも高評価が多くなっていますが、注目されているのは作者が芸能人だからじゃないの?本当のところはどうなの?と思っている人もいるのではないでしょうか。
今回は加藤シゲアキさんのファンではなく、年間100冊読むただの本好きな私が、忖度なしの率直な感想を綴っていきたいと思います。
オルタネート作品情報
あらすじ
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須のウェブサービスとなった現代。東京にある円明学園高校で、3人の若者の運命が、交錯する。調理部部長で品行方正、しかし、あるトラウマから人付き合いにコンプレックスを抱える蓉。母との軋轢を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津。高校を中退し、かつてのバンド仲間の存在を求めて大阪から単身上京した尚志。出会いと別れ、葛藤と挫折、そして苦悩の末、やがて訪れる「運命」の日。3人の未来が、人生が、加速する――。 悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描く。3年ぶり、渾身の新作長編。(新潮社HPより)
公式PV
なんと、本書の公式なプロモーションビデオも公開されています。
加藤シゲアキ/オルタネート (Official Promotion Video)
これを見るとなんだか暗そうな話かな?と思っちゃいますがそんなことはなかったです(笑)
オルタネートの意味は?
Alternate(オルタネート)とは本来こんな意味があります。
Alternate
(1)交互に起こる、互い違いになる、交互に繰り返す
(2)《電気》〈電流が〉交流する
(3)代わりのもの、交代要員、代理人、補欠
(新潮社HPより)
本書の中では、高校生だけが使えるマッチングアプリの名称として使われています。
オルタネートを使うには生徒手帳の登録が必要で、高校に入学してから卒業するまでの間だけアカウントを作れます。
繋がった(コネクトした)相手とメッセージのやりとりができるSNS的な要素と、ユーザーが指定した条件に合わせて相性の良い人間をレコメンドしてくれるマッチングサービス的な要素があるアプリです。
また、遺伝子解析サービスと連携して、遺伝子レベルで相性の良い人を割り出し出逢いに繋げるというサービスも導入を始めたという設定になっています。
『オルタネート』読書感想
読了後の率直な感想です。
4つのポイントをまとめました。
調理・園芸・音楽演奏の描写が本格的
主人公の1人でもある新見蓉(にいみ・いるる)は料理に打ち込む高校3年生。
またその親友の水島ダイキは園芸部部長で、校庭の庭いじりを日課としています。
もう1人の主人公でもある楤丘尚志(たらおか・なおし)は、高校を中退し音楽スタジオでバイトをしながらドラムの演奏に情熱を傾けています。
著者の加藤シゲアキさんはかなり熱心に取材や研究をしたのではないでしょうか。
それぞれの登場人物が打ち込む料理や園芸や音楽について、素人では知ることのできない専門的な事まで書き込まれていて、それらに打ち込む登場人物たちの個性が際立ち、魅力的に感じました。
やや登場する高校生たちが直情的すぎる気も…
少し気になったのは、 行動や抱く感情が単純すぎると言いますか、登場人物たちが直情的で少し幼すぎる印象を受けました。
高校生ともなると、自分の気持ちを隠したり偽ったりもすると思います。
心の内と行動にギャップがあって、そのウラハラさが読み手は分かる。
そんな風に描かれているともっと面白かったのかなとも感じました。
「オルタネート」というアプリの設定が秀逸
現実でも若者の間で広く使われているSNSやマッチングアプリを土台に、「高校生限定」という設定を加えたオルタネートというアプリをめぐる物語は、新鮮なワクワク感がありました。
読みながらオルタネートのようなアプリが近いうちに誕生しそうだなと思いましたね!
後半ではオルタネートをきっかけにそれぞれの物語が一つになり、3人の主人公が関係性を持っていく展開もとても面白かったです。
肯定的に描かれたスマホやSNSでのコミュニケーション
スマホやSNSによってトラブルに巻き込まれるといったような悪い面に着目して書かれた小説はよくありますが、『オルタネート』は良いコミュニケーションツールの一つとして肯定的に描かれているところも新鮮でした。
スマホやSNSは使いすぎることによっての人体への悪影響もあるようですが、上手く使えばこんな風に趣味が合う人や遠方の人と繋がることができる有益なコミュニケーションツールでもあるんですよね。
まとめ
『オルタネート』を読んでの正直な読書感想を語ってみました。
直木賞候補になるだけあって、面白かったです。
これだけの評価を得ているのは、著者がアイドルだからという理由ではなく、純粋に作品が良かったからでしょう。
特に十代の読者に刺さる内容だと思います。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
<関連記事>
-
-
『スマホ脳』要約・読書感想ースマホがもたらす脳への悪影響とは
続きを見る
-
-
ノミネート全作品読破!【2021年本屋大賞】大賞予想&おすすめ作品BEST3!
続きを見る
-
-
2021年本屋大賞ついに決定!順位結果を紹介します
続きを見る