本屋大賞ノミネート作『八月の銀の雪』を読みました。
こちら『八月の銀の雪』は、物語に科学系のトリビアが含まれている短編集です。
こんな小説は他にはあまりないですね。
物語に組み込まれたトリビアにほほぉとなりながら物語の展開を楽しみました。
5編の短編集のうち1番印象に残ったのは、主人公が微生物である珪藻(ケイソウ)を使ったアートに打ち込む男性と出会うお話。
珪藻アートって何?美しいみたいだけどどんな見た目なの?と興味がわき、調べてみました。
そんなわけで、『八月の銀の雪』のあらすじや感想とともに、珪藻アートについても語っていきたいと思います。
『八月の銀の雪』あらすじ
就活連敗中の大学生、子育て中のシングルマザー、地元の家族と疎遠になっているサラリーマン、うまく恋愛ができないOL、上司から不正を指示されたために仕事を辞めた中年男性……
生きることへのつまづきを感じている人たちが、科学や自然の知見に触れたことから前向きな力を得て、また一歩踏み出す5つの短編集。
珪藻アートとは?


収録されている短編集のうちの4作目、「玻璃を拾う」で主人公は珪藻アートに打ち込む男性と出逢います。
珪藻アートとは、単細胞の微生物、珪藻(ケイソウ)を用いたアートのことです。
珪藻は川や海に生息する0.1ミリ以下の小さな微生物。
抗菌・防臭・吸収力があるバスマット「珪藻土バスマット 」の原料として知っている人もいるかもしれません。
珪藻アートは、丸や星、三角など様々な形をしている珪藻の殻を並べて作られています。
顕微鏡で覗き込み、プレパラート上に珪藻を根気よく丁寧に並べていくことで出来上がります。
自然と人間の繊細な作業によって作られる、極小のアート作品です。
↓こちらの動画でも珪藻アートが紹介されています。
参考にどうぞ。
息をのむような極小のアート! 『珪藻美術館』
『八月の銀の雪』感想
物語の展開として、劇的なことが起こるわけではないです。
1つのお話が終わるたびに、主人公たちはちょっぴり前向きな気持ちになっていて、読者はちょっとした科学の知識が増えている。
そんな本でした。
個人的には、珪藻アートについて知ることができて本当によかったです。
関連する書籍も出版されていたり美術館で展示会も開催されたりしているようなので、引き続き追って知識をより深く知っていきたいですね。
物語の中に理系のトリビアが組み込まれている小説というのは、今までにない形態で新鮮に感じました。
著者の伊与原新さんは、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程を修了しているTHE・理系な方のようです。
自分のおこなってきた研究を小説の創作にも活かしているのでしょうね。
読む前のただタイトルと表紙を見ただけの時、八月の銀の雪ってどういう意味?八月に雪は降らないぞ、と不思議に思いました……が読んでみて謎が解けました。
ちょっとだけネタバレすると、銀の雪が降るのは地球の内側でのことなんですよね〜!
本書を読まなければ知らなかった科学の知識です。
読み終えてみると表紙とタイトルの意味がわかって、 スッキリ。
いいタイトル&表紙だなぁと感じます。
タイトルと表紙の謎を知りたい方はぜひ読んでみてください。
着々と本屋大賞ノミネート作を読んできたわけですが、本作で8冊目。
終わりが見えてきました。
引き続き楽しんでいこうと思います。
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